ひなたぼっこ世にはばかる

ボカロとアニメと本の備忘録

蝶々Pさんの「About me」を解釈してみた

こんにちは。てぃなです。

天気予報を見たら、今週はずっと雨予報。

どうやら秋の長雨のようです。

そんな雨の日に聴きたい、切ないボカロ曲を和訳&解釈してみました。

 

ベースとピアノの音が印象的な本家様はこちら。

www.nicovideo.jp

ぱなまんさんの歌ってみた動画も素敵です。

特に、最後のサビ前の日本語歌詞の部分が切ない響きなのでぜひ。

www.youtube.com

 

登場人物

「I」(訳:僕)主人公

「You」(訳:君)雨の日に亡くなった昔の恋人

「You」(訳:キミ)今の恋人

 

作者・蝶々PさんのTwitterには、次のように記載されています。

つまり、”You”が指す人物は、亡くなった昔の恋人の他に、今の恋人もいるということ。そのため「君」と「キミ」で訳し分けました。

 

考察ストーリー

話があるんだ。今夜聞いてくれるかい?僕の過ちについてのことだ。かつて君と一緒に暮らした寝室で待ってる。だけど、どのみち君は死んでしまっているから来られないよね。分かってる。気にしないさ。

今、雨が降り始めた。君が泣いているみたいだ。僕の気分も沈んでいく。君が死んだこの世界はどうなっていくんだろう。何も手がつかなかった。君の死を気にしないなんて無理だ。

ほんと素晴らしいよね。君が死んだ後も、世界は何事もなかったかのように回っている。また頭がおかしくなりそうだ。すべてを投げ出したくなる。そんな簡単なことではないけれど。

 

たぶん僕は優しい奴じゃないと思う、キミが思っているほどには。キミの目を見て、作り笑顔で「愛してる」って言うし。だって死んだ彼女のことがどうしても忘れられないんだ。

僕は分からない。どうすればいいのか。死んだ彼女のことを忘れて、キミを愛するべきなのか。このままキミに嘘をつき続け、死んだ彼女を永遠に愛するべきなのか。ねえ教えてよ。どっちも選べなくて、心が苦しくて悲しいんだ。

でも、僕はキミにキスをする。

心に嘘をつきながら。目の前のキミを安心させるために。

 

バカみたいに死んだ彼女を忘れられないんだ。キミが僕に恋を思い出させたから、死んだ彼女の記憶が蘇ってしまったよ。

 

僕は取り返せない。君と過ごした日々を。疑心暗鬼が僕をおかしくしたんだ。もし君がまだ生きていたら、喧嘩したのは君のせいではないと伝えたかった。でももう遅いね。君は死んでしまったから。 

 

気付いた時には君は死んでしまった。世界の全てが、あの日喧嘩しなければ君を助けられたかもしれないなんて後悔している、そんな僕を笑うんだろう?風が冷たいこんな日は、死んだ君を思い出すよ。

 

たぶん僕は優しい奴じゃないと思う、君が思っているほどには。目を閉じて、今の彼女に心からの笑顔で「愛してる」って言うし。だって君はもう死んでしまって、僕には新しい彼女ができたのだから。

僕は分からない。どうすればいいのか。このまま新しい彼女に嘘をつき続け、君を永遠に愛するべきなのか。君のことを忘れて、新しい彼女を愛するべきなのか。ねえ教えてよ。どっちも選べなくて、心が苦しくて悲しいんだ。

 

でも、そろそろ君にさよならを言わなきゃ。

さよなら。

 

まとめ

1サビ2サビと最後のサビとで、"you"が指す人物を変えて解釈してみました。最後のサビ前まではずっと死んだ昔の彼女を引きずっていますが、最後になんとか今の彼女を愛そう、立ち直ろう、としています。

犯した過ちは取り返せないけれど。これから隣にいる大切な人には、きちんと愛が伝えられますように。

 

歌詞&和訳

I have a story to tell

Do you hear me tonight

It's things about me

話があるんだ。

今夜聞いてくれるかい。

僕についてのことだ。

 

I'll be waiting in bedroom

But anyway you can't come

I get it, never mind

寝室で待ってる。

だけど、どのみち君は来られない。

分かってる。気にしないさ。

  

Now, it is starting to rain

I feel you drop tears

And my heart become heavy

今、雨が降り始めた。

君が泣いているみたいだ。

僕の気分も沈んでいく。

 

What's this world coming to?

There's nothing that can be done

I couldn't careless

この世界はどうなっていくんだろう。

何もできることはなかった。

気にしないなんて無理だ。

 

It's wonderful for me that world is moving now

Some lights turn around and around

素晴らしいね。世界は今も変わり続けているなんて。

いくつもの星が回っていく。

 

I lost my head again

And just want to throw everything away

It's not that easy

また頭がおかしくなった。

ただすべてを投げ出したくなる。

そんな簡単なことではないけれど。

 

Maybe I'm afraid I'm not as tender guy as you think

Looking your eyes, and I say "love you" with fake smile

たぶん僕は優しい奴じゃないと思う、キミが思っているほどには。

キミの目を見て、作り笑顔で「愛してる」って言うし。

 

I don't know what to do

Please tell me what I should do

Just feel so sad inside, but I kiss you

Kiss you…

僕は知らない。どうすればいいのか。

ねえ教えてよ。何をすべきか。

ただ悲しいんだ。でも僕はキミにキスするよ。

キスするよ..

 

I have a story to tell

Do you hear me tonight

It's things about me

I'll be waiting in bedroom

But anyway you can't come

I get it, never mind

話があるんだ。

今夜聞いてくれ。

僕についてのことだ。

寝室で待ってる。

だけど、どのみち君は来られない。

分かってる。気にしない。

 

I can't get my mind off you

I'm such an idiot

Same as usual

君を忘れられない。

まるでバカだね。

いつもと同じだ。

 

You made me feel so better

It brings back memories

It's things about you

キミは僕の胸を熱くさせた。

それは記憶を呼び覚ます。君についての。

 

My hands can't take back that the time I passed with you

Some doubts broke me down, broke me down

僕は取り返せない。君と過ごした日々を。

いくつもの疑念が僕をおかしくしていったんだ。

 

If you are still alive, I wanted to say it's not your fault

But it's too late for us

もし君がまだ生きていたら、僕は言いたかった。君の過ちではないことを。

でももう遅いね。

 

Maybe I'm afraid I'm not as tender guy as you think

Looking your eyes, and I say "love you" with fake smile

I don't know what to do

Please tell me what should I do

Just feel so sad inside, but I kiss you

Kiss you…

たぶん僕は優しい奴じゃないと思う、キミが思っているほどには。

キミの目を見て、作り笑顔で「愛してる」って言うし。

僕は知らない。どうすればいいのか。

ねえ教えてよ。何をすべきか。

ただ悲しいんだ。でも僕はキミにキスするよ。

キスするよ..

 

It's wonderful for me that world is moving now

Some lights turn around and around

I lost my head again

And just want to throw everything away

It's not that easy

素晴らしいね。世界は今も変わり続けているなんて。

いくつもの星が回っていく。

また頭がおかしくなった。

ただすべてを投げ出したくなる。

そんな簡単なことではないけれど。

 

気付いた時には終わりを告げ

全てが僕を笑うんだろう?

風が冷たいこんな日は

君を思い出すよ

 

Maybe I'm afraid I'm not as tender guy as you think

I close my eyes, and I say "love you" with true smile

たぶん僕は優しい奴じゃないと思う、君が思っているほどには。

目を閉じて、心からの笑顔で「愛してる」って言うし。

 

I don't know what to do

Please tell me what should I do

Just feel so sad inside,but say good-bye

Good-bye…

僕は知らない。どうすればいいのか。

ねえ教えてよ。何をすべきか。

ただ悲しいんだ。でもさよならを言うよ。

さよなら。

kemuさんの『六兆年と一夜物語』を解釈してみた

こんにちは。てぃなです。

高校生のときkemuさんの曲が大好きでよく聴いていました。

先月、嵐の二宮さんがMステで『六兆年と一夜物語』を紹介してくださったと聞き、ハマっていた記憶を引っ張り出しつつ解釈しようと思い立ちました。

まずは素敵な本家様をどうぞ。

www.youtube.com

二宮さんが紹介してくださったのはおそらく、まらしぃさんがアレンジしたピアノverです(違っていたらすみません)。そちらも本当に素敵なので、ぜひ聴いてみてください。

途中で、同じkemuさんの曲『インビジブル』が入るアレンジも粋で大好きです。

www.youtube.com

 

登場人物

忌み子(=恐ろしい力を持った、災厄をもたらす子)と呼ばれ、集落の人たちから暴力を振るわれている少年。

動画のコピーに「少年は、人になりたかった」と書いてあるため、人ではない化け物、もしくは人でなしと言われ続けて育ったのだと思われます。

 

MVを見ると、男の子は普通の人間の姿をしているため、異様な姿という意味の「鬼子」ではないと思います。何らかの邪悪な恐ろしい力を持っていたか、厄日など運の悪い日に生まれてしまったことにより、周囲から忌み嫌われていた「忌み子」だったのでしょう。

 

舌のない少女。

2番サビの「もう子どもじゃない」と、2番Aメロの「君はいつしかそこに立ってた」「名前も舌もない」、2番サビの「忌み子」から察するに、経済的な理由などで親に望まれずに生まれたために身を売られ、集落にやってきた売春婦だと思われます。

望まずに生まれてきたという意味での「忌み子」。

舌を抜かれたのは、人身売買か売春の際に抵抗するのを防ぐためではないでしょうか。

 

重要表現

忌み子、鬼子、鬼

忌み子=望まずに生まれてきた子 or 何らかの災厄をもたらす子

・鬼子=親に似ていない子ども、異様な姿で生まれた子ども

・鬼=民話や郷土信仰に登場する、悪い物・恐ろしい物・強い物を象徴する存在。おぬ(隠)が転じたことばで、元々は姿の見えない、この世のものではないことを意味します。

 

鬼という概念は、日本や中国などの仏教思想に登場します。西洋思想でいう悪魔です。西洋で戦争やペスト流行により魔女狩りが行われたように、自分ではどうにもならない何らかの悪い現象を「忌み子」「鬼の子」のせいにしていたのでしょう。

 

夕焼け

日没に空が赤く見える現象。

太陽が沈むことから儚さを想起させ、また、子ども時代に遊んでいた記憶を懐かしむ郷愁の象徴としても使われます。

 

「夕焼け小焼け」は、「大判小判」のような言葉の語呂です。「名も無い時代」という歌詞から考えると、大正時代につくられた童話(夕やけこやけで 日が暮れて~♪)ではないと思います。

 

知らない声、耳鳴り

この曲単体で解釈するならば、少年が忌み子とされていた原因である”恐ろしい力”が発動したと考えられます。kemuさんの曲全体で見るならば、別曲『カミサマネジマキ』で発明されたすべての願いを叶える装置の力です。

 

六兆年

地球の誕生は46億年前なので、六兆年前に人間が存在しているはずがありません。似た数字で6億年前だと、地球は先カンブリア時代から古生代に突入し、生物が爆発的な多様化を始めたときです。

この生物誕生爆発と全人類消失を対比させ、さらに「名も無い時代」を強調するために、あえて地球さえ存在しない「六兆年」をタイトルに採用したのかな…と解釈しています。

 

また、6という数字には様々な意味があります

西洋思想では「誕生」。神がこの世を6日間で創造したという神話からきています。ただし、6を3つ並べると「悪魔」の意味になります。

中国では縁起の良い数字です。「流」と発音が似ており、障害がなく流れるように成功することを想起させるからです。

一兆はゼロが12個並ぶので、ちょうど6の倍数ですね!

 

こじつけ解釈しかできなくてすみません。ただ、色々な意味を込めた「六兆年」なのかなと思っていただければ幸いです。

 

ストーリー考察

僕は何も知らなかった

これは、誰も知らないおとぎばなし。

 

むかしむかし、ある日本の集落に、名も無い少年がいたそうな。

少年は、産まれついたときから「忌み子」ーー恐ろしい力を持った、災厄をもたらす子ーーと忌み嫌われ、その身に有り余るほどの暴力を受けていた。

 

「悲しいことなんて、何もない」

産まれたときから暴力を受け続けた少年は、悲しいという感情を知らない。

そのはずなのに、引っかかりを覚えるのはなぜだろう。

 

今日もまた少年は母親に手を引かれ、どこかへ連れて行かれた。

 

僕は何も知らない。

叱られたあとの、お母さんのやさしさも。

雨上がりに握った、手の温もりも。

感情がないなんて嘘だ。

本当は、心が寒いんだ。

 

僕はなんで死なないんだろう?

「生きたい」って夢のひとつも見れないくせに。

こんな僕のことは誰も知らないまま、今日も一日が終わる。

 

ある日、君がやってきた

吐き出すように怖い暴力と、蔑んだ目を向けられる日々。

そんな中、君はいつしかそこに立っていた。

 

僕と話したら、君も暴力を受けるかもしれない。だからダメだ。

「君の名前が知りたいな」

それでも抗えず話しかけてしまった僕に、

「ごめんね。名前も舌もないんだ」

君はそう答えた。

 

もしかして、君も忌み子なの?

僕と同じように暴力を振るわれているの?

 

「一緒に帰ろう」

僕の居場所なんか何処にも無いはずなのに、君は僕の手を引いた。

 

僕は何も知らない。

君は親に捨てられた売春婦で、もう純粋無垢な子どもではないことも。

でも、今感じている手の温もりだけは、本当なんだって分かるよ。

 

なぜ君は、僕の手を取ることを止めないんだろう。

忌み子である僕と一緒にいるところなんか見られたら、殺されちゃうのに。

 

いつの間にか雨が上がって、綺麗な夕焼け空が広がる。

僕は考えるのを止めて、二人で空に向かって駆け出した。

 

みんな いなくなればいいのに

僕たちは今までを取り戻すように遊び回った。

やがて日が暮れて、そして夜が明けたとき、

大人たちに捕まった。

 

また暴力を振るわれるのは嫌だ。

でも、僕のせいで君が責められるのは、もっと嫌だ。

 

こんな嫌な世界、僕と君以外、みんないなくなればいいのに。

 

「その願い、私が叶えてあげる」

知らない声が聞こえたその瞬間、

僕と君以外の全人類が、消えた。

 

僕は何も知らない。

これからのことも。君の名前も。

でも、今はこれでいいんだって、思うんだよね。

 

あのとき聞こえた知らない声は、今はもう聞こえない。

 

まとめ

ざっくり言えば、周囲から嫌われていた二人が駆け落ちするお話です。

全人類を消すという暴挙に出たところに、私はボーカロイド曲らしさを感じます。ふつうはロミオとジュリエットみたいに二人で遠くに逃避しますから。

 

さて、駆け落ちした二人はどうなったのでしょうか?

気になる方は、kemuさんの次回作『地球最後の告白を』を聴いてみてください。

 

ちなみに、次回作では歌詞に「メトロポリス」が出てきます。

あれえ…都市じゃなくて集落じゃなかったっけ…西洋じゃなく東洋の世界観じゃなかったっけ…みたいな苦悩があるので解釈書くかどうかは未定です。

Neruさんの『脱獄』を解釈してみた

こんにちは。てぃなです。

Neruさんの『脱獄』のMVがかっこ良すぎて何度も見返してました。

見続けるうちに解釈を思いついたので書き留めます。

 

まずは偉大すぎる本家様をどうぞ

www.youtube.com

 

登場人物

「僕」

オレンジ色の髪。目の色は黒。サビは水色。 

幼少期:ゴーグルは首にひっかけ、おどおどしている

成長後:ゴーグルを額に装着し、不敵な笑みを浮かべている。

 

「君」

黒髪。目の色は赤。

幼少期:ゴーグルを額に装着。いたずらっこのような笑みを浮かべる。 

成長後:警官。表情がわからない。

 

時代背景

時代背景を仄めかす歌詞がいくつかありました。

「仄暗い城壁」

城なのでヨーロッパ?MVで描かれているのは丸い塔のような場所ですね。

「ガス臭い街」

工業地帯でしょうか。ガスは石炭などの燃料を想起させます。

「飛行船」

1910年代~第二次世界大戦まで存在したプロペラ付きの複葉機がMVに描かれています。

モノポリー

1935年にアメリカで販売を開始したボードゲーム。こういった囚人っぽい歌に出てくる用語ではないので、初めて聞いたときすごく引っかかりました。

 

調べてみると、興味深い記事がありました。

4.第2次大戦中、モノポリーは脱獄ツールとして使われた

ABCによると、秘密情報部は、ドイツ収容所のイギリス人捕虜に脱出ツールを届ける方法に頭を悩ませていました。

捕虜収容所は当時、人道支援物資の受け入れを許していましたが、それに目をつけ、情報部は、絹製品製造業者、ジョン・ワディントン社に絹製の地図、小さなコンパスなどの道具を通常のモノポリーセットに隠した特別のセットを作らせ、捕虜収容所に送ったということです。

(そうだったの!?モノポリーにまつわる知られざる5つのストーリー< http://ideahack.me/article/1436 >(2016.05.02))

 

街=収容所、ガス=毒ガスとも推測できます。

ただ、少年たちの成長前後で時代背景が変わらないので、収容所説だと辻褄が合いません。ずっと同じ場所に閉じ込められているので収容所ができた後に生まれたことになりますが、第二次世界大戦1939~1945年という4年間のみ。

なので「脱獄」の象徴として登場させた説が有力かと。

場所がドイツってことを仄めかしているのかも。かの有名なルール工業地帯がありますし、その近くにお城もたくさんあります。何より、ここは世界恐慌(1929)の影響が直撃して失業者が増えた街です。

生活に困った人々が犯罪に走り、警官が銃を向ける。…そんな光景がありえない話ではない時代ですね。

 

まとめると 

時代

幼少期:モノポリーの発売後(1935年頃)

成長後:第二次世界大戦中(1939-1945)

場所

ドイツのルール工業地帯

 

ストーリー考察

「僕」が子供の頃を振り返っている。

時は世界恐慌後。城壁で閉ざされた工業地帯に生まれた「僕ら」は、労働者として働かされる日々を送っていた。草原の色さえ見たことがなく、唯一の娯楽は最近発売されたモノポリー。「僕」はいつか救われることを夢見ているが、「君」は馬鹿じゃないのと皮肉った。 

群衆の悲鳴。響く銃声。今日もまた、苦しい生活に耐えきれず犯罪に手を染めた者が警官によって粛正されたらしい。この街ではこんなにも命が軽く扱われるのか?怯える「僕」に、「君」は不敵に笑って呟いた。

「逃げよう」

あの頃の「僕ら」は夢を見ていた。この息苦しい街の外に、温もりと愛があるという夢を。閉じた街の向こうへ飛行機で抜け出す夢を。

「僕」がこの夢を見るのは何回目だったっけ?

ーーーーーーーーーー

MVでは『何回目だったっけ』のところで「君」が消え、「僕」は成長しています。2人で同じ夢を見ていたはずなのに、いつの間にか「僕」だけになってしまった。「君」はどこへいったのでしょうか。 

 

子供の頃の夢を見たまま成長した「僕」が、ついに夢を現実にする。

昔「君」が自慢気に見せてくれた、子供の空想のような飛行機の設計図。誘う「君」に釣られ、いま「僕」は飛行機を完成させた。

飛行機の轟音に気づいた警官がブザーを鳴らす。そんなのお構いなしに「僕」は飛行機を動かし、次第に音が遠ざかってゆく。騒ぐ警官たちに向け、警官の「君」は発砲の合図を飛ばした。

その判断までの僅かな時間に飛行機は建物をーー抜けた。 

あの頃の「僕ら」は夢を語っていた。「閉ざされて息苦しいゴミのような街を、上から見下ろしてやるんだ」って。錆びたスロットルを目一杯押し込んで、骨が折れるくらいスピード出して、外に飛び出して。今、その夢を叶えようじゃないか。

ーーーーーーーーーー

「僕」を夢へと誘った「君」は、なんと粛正側の警官になっていました。「君」はいつしか夢を忘れて、権力を手に入れることで自由を感じようとしたのでしょうか。布で目を隠しているのは、幼少期の気持ちを押し隠していることの表れかもしれません。

少し話は反れますが、MVに出てくる『目一杯押し込んで 今』の「僕」の不敵な笑みと満足そうな笑顔が最高にかっこいい。今まさに夢を叶えんとする瞬間の人は、あんな表情を浮かべるのでしょうね。

 

「君」視点。夢を見続けた「僕」に、「君」は何を想う?

俺がやっとの思いで押し込めた夢を、アイツはまだ見ているのか。くそっ、なんでこんなにイライラするんだ。絶対に逃がさない。俺は階段を駆け上がった。昔の夢の跡をかき分けて。

やっと着いた屋上で目にしたのは、舞い上がる飛行機。警告のサインと止まらないエラーランプが見える。原因は分からない。それでも君は顔色ひとつ変えずに高度を上げ続け、

 

ついに壁を突破した。

待ってくれ、俺も、

ーーそのとき、白い光と君の不敵な笑みが見え…俺は息を呑んだ。

ーーーーーーーーーー

俺=黒髪くん、君=橙髪くん、の設定です。Cメロの「君」だけは橙髪くんを指してます。橙髪くんの目が大空の色に染まるシーンが良いですね。

間奏の部分はMVを見て考えました。壁を突破した「僕」に対して「君」が何を想ったかは、MVしかないので色々な解釈がありえるかと。

 

「僕」が最期に思ったこと。

エンジンがヒートして機体が壊れるのも気にならない程に、スピード全開で駆け巡る大空は偉大だった。この身が吹き飛んでしまおうとも、これでいいと思ってるんだ。

だって「僕」は、自由になったんだから。

ーーーーーーーーーー

『身ごとどこかに』のときにMVに出てくる青い羽は2通りの解釈があると思います。

1つは自由の象徴。鳥を飛行機に見立て、青い目の色をした「僕」が自由に飛び立ったことを示すという解釈。

もう1つはしあわせの象徴。童話『青い鳥』には「しあわせの青い鳥を探したけど、実は飼っていたハトだった」という話があります。これとかけて、しあわせは自分の胸の中にあったという解釈。

今回は、歌詞重視で前者を取りました。

 

最後に

MVの所々に登場する以下の言葉。

今ここで同じ空を抱いているはずなのに、いつから僕等はすれ違ってしまったのだろう

子供の頃、この瞳が確かに捉えていたモノを

見て見ぬ振りをするのが 大人になる事だというのなら、

僕は一生、子供のままだって構わない。 

これを読んでいると、

・息苦しい街=現実社会

・夢=権力から自由になること

・警官になった君=昔は権力を嫌がっていたけどいつしか権力を持つ側に回ってしまった人

・飛行機で飛び立つ僕=自由を手に入れようと夢見続ける人

でも解釈できるのかなと思いました。

 

「世の中の理不尽なことを見て見ぬ振りをするのが大人になる事だというのなら、僕は一生、子供のままだって構わない。」子供のときに思ったことを忘れるな、流されるな、抗え。というNeruさんからのメッセージなのかもしれませんね。

 

歌詞

仄暗い城壁で淘汰した ガス臭いこの街に生まれて

僕らまだ草原の 色も知らない

ここでずっと救いを待ってても モノポリーが上手くなるだけさ

君はそう笑っていた

 

群衆の悲鳴 響く銃声 何を命と言うんだろう

白い息混じり 君は呟いた「逃げよう」

 

あの頃の僕ら 夢を見ていたんだ

この檻の先には 温もりと愛がきっとあるんだ

閉じた窓の 向こうへ飛んでいく

夢を見るのも 何回目だったっけ

 

遥か遠い思い出の話 君が自慢気に見せてくれた

馬鹿みたいな設計図 子供の空想

そして手招く君に釣られ たった今目の前にあるのが

あの日の飛行船だ

 

遠ざかるブザー 騒ぐ警官 発砲の合図が飛ぶ

僅かな時間 朽ちた天井を 抜けた

 

あの日の僕ら 夢を語っていた

この檻の上から ゴミの様な都市を見下ろすんだ

錆びたスロットル 骨が折れるくらいに

目一杯押し込んで今 現実を突破しよう

 

警告のサイン 不明な素因 止まらぬエラーランプに

顔色変えず 高度上げて君は 笑う

 

エンジンがヒートして 機体がどうしたって

気にもしない程に トリップしてしまう大空は偉大さ

身ごとどっかに 吹き飛んでしまったって

これはこれでもう いいんだって思っている