ひなたぼっこ世にはばかる

ボカロとアニメと本の備忘録

Neruさんの『脱獄』を解釈してみた

こんにちは。てぃなです。

Neruさんの『脱獄』のMVがかっこ良すぎて何度も見返してました。

見続けるうちに解釈を思いついたので書き留めます。

 

まずは偉大すぎる本家様をどうぞ

www.youtube.com

 

登場人物

「僕」

オレンジ色の髪。目の色は黒。サビは水色。 

幼少期:ゴーグルは首にひっかけ、おどおどしている

成長後:ゴーグルを額に装着し、不敵な笑みを浮かべている。

 

「君」

黒髪。目の色は赤。

幼少期:ゴーグルを額に装着。いたずらっこのような笑みを浮かべる。 

成長後:警官。表情がわからない。

 

時代背景

時代背景を仄めかす歌詞がいくつかありました。

「仄暗い城壁」

城なのでヨーロッパ?MVで描かれているのは丸い塔のような場所ですね。

「ガス臭い街」

工業地帯でしょうか。ガスは石炭などの燃料を想起させます。

「飛行船」

1910年代~第二次世界大戦まで存在したプロペラ付きの複葉機がMVに描かれています。

モノポリー

1935年にアメリカで販売を開始したボードゲーム。こういった囚人っぽい歌に出てくる用語ではないので、初めて聞いたときすごく引っかかりました。

 

調べてみると、興味深い記事がありました。

4.第2次大戦中、モノポリーは脱獄ツールとして使われた

ABCによると、秘密情報部は、ドイツ収容所のイギリス人捕虜に脱出ツールを届ける方法に頭を悩ませていました。

捕虜収容所は当時、人道支援物資の受け入れを許していましたが、それに目をつけ、情報部は、絹製品製造業者、ジョン・ワディントン社に絹製の地図、小さなコンパスなどの道具を通常のモノポリーセットに隠した特別のセットを作らせ、捕虜収容所に送ったということです。

(そうだったの!?モノポリーにまつわる知られざる5つのストーリー< http://ideahack.me/article/1436 >(2016.05.02))

 

街=収容所、ガス=毒ガスとも推測できます。

ただ、少年たちの成長前後で時代背景が変わらないので、収容所説だと辻褄が合いません。ずっと同じ場所に閉じ込められているので収容所ができた後に生まれたことになりますが、第二次世界大戦1939~1945年という4年間のみ。

なので「脱獄」の象徴として登場させた説が有力かと。

場所がドイツってことを仄めかしているのかも。かの有名なルール工業地帯がありますし、その近くにお城もたくさんあります。何より、ここは世界恐慌(1929)の影響が直撃して失業者が増えた街です。

生活に困った人々が犯罪に走り、警官が銃を向ける。…そんな光景がありえない話ではない時代ですね。

 

まとめると 

時代

幼少期:モノポリーの発売後(1935年頃)

成長後:第二次世界大戦中(1939-1945)

場所

ドイツのルール工業地帯

 

ストーリー考察

「僕」が子供の頃を振り返っている。

時は世界恐慌後。城壁で閉ざされた工業地帯に生まれた「僕ら」は、労働者として働かされる日々を送っていた。草原の色さえ見たことがなく、唯一の娯楽は最近発売されたモノポリー。「僕」はいつか救われることを夢見ているが、「君」は馬鹿じゃないのと皮肉った。 

群衆の悲鳴。響く銃声。今日もまた、苦しい生活に耐えきれず犯罪に手を染めた者が警官によって粛正されたらしい。この街ではこんなにも命が軽く扱われるのか?怯える「僕」に、「君」は不敵に笑って呟いた。

「逃げよう」

あの頃の「僕ら」は夢を見ていた。この息苦しい街の外に、温もりと愛があるという夢を。閉じた街の向こうへ飛行機で抜け出す夢を。

「僕」がこの夢を見るのは何回目だったっけ?

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MVでは『何回目だったっけ』のところで「君」が消え、「僕」は成長しています。2人で同じ夢を見ていたはずなのに、いつの間にか「僕」だけになってしまった。「君」はどこへいったのでしょうか。 

 

子供の頃の夢を見たまま成長した「僕」が、ついに夢を現実にする。

昔「君」が自慢気に見せてくれた、子供の空想のような飛行機の設計図。誘う「君」に釣られ、いま「僕」は飛行機を完成させた。

飛行機の轟音に気づいた警官がブザーを鳴らす。そんなのお構いなしに「僕」は飛行機を動かし、次第に音が遠ざかってゆく。騒ぐ警官たちに向け、警官の「君」は発砲の合図を飛ばした。

その判断までの僅かな時間に飛行機は建物をーー抜けた。 

あの頃の「僕ら」は夢を語っていた。「閉ざされて息苦しいゴミのような街を、上から見下ろしてやるんだ」って。錆びたスロットルを目一杯押し込んで、骨が折れるくらいスピード出して、外に飛び出して。今、その夢を叶えようじゃないか。

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「僕」を夢へと誘った「君」は、なんと粛正側の警官になっていました。「君」はいつしか夢を忘れて、権力を手に入れることで自由を感じようとしたのでしょうか。布で目を隠しているのは、幼少期の気持ちを押し隠していることの表れかもしれません。

少し話は反れますが、MVに出てくる『目一杯押し込んで 今』の「僕」の不敵な笑みと満足そうな笑顔が最高にかっこいい。今まさに夢を叶えんとする瞬間の人は、あんな表情を浮かべるのでしょうね。

 

「君」視点。夢を見続けた「僕」に、「君」は何を想う?

俺がやっとの思いで押し込めた夢を、アイツはまだ見ているのか。くそっ、なんでこんなにイライラするんだ。絶対に逃がさない。俺は階段を駆け上がった。昔の夢の跡をかき分けて。

やっと着いた屋上で目にしたのは、舞い上がる飛行機。警告のサインと止まらないエラーランプが見える。原因は分からない。それでも君は顔色ひとつ変えずに高度を上げ続け、

 

ついに壁を突破した。

待ってくれ、俺も、

ーーそのとき、白い光と君の不敵な笑みが見え…俺は息を呑んだ。

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俺=黒髪くん、君=橙髪くん、の設定です。Cメロの「君」だけは橙髪くんを指してます。橙髪くんの目が大空の色に染まるシーンが良いですね。

間奏の部分はMVを見て考えました。壁を突破した「僕」に対して「君」が何を想ったかは、MVしかないので色々な解釈がありえるかと。

 

「僕」が最期に思ったこと。

エンジンがヒートして機体が壊れるのも気にならない程に、スピード全開で駆け巡る大空は偉大だった。この身が吹き飛んでしまおうとも、これでいいと思ってるんだ。

だって「僕」は、自由になったんだから。

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『身ごとどこかに』のときにMVに出てくる青い羽は2通りの解釈があると思います。

1つは自由の象徴。鳥を飛行機に見立て、青い目の色をした「僕」が自由に飛び立ったことを示すという解釈。

もう1つはしあわせの象徴。童話『青い鳥』には「しあわせの青い鳥を探したけど、実は飼っていたハトだった」という話があります。これとかけて、しあわせは自分の胸の中にあったという解釈。

今回は、歌詞重視で前者を取りました。

 

最後に

MVの所々に登場する以下の言葉。

今ここで同じ空を抱いているはずなのに、いつから僕等はすれ違ってしまったのだろう

子供の頃、この瞳が確かに捉えていたモノを

見て見ぬ振りをするのが 大人になる事だというのなら、

僕は一生、子供のままだって構わない。 

これを読んでいると、

・息苦しい街=現実社会

・夢=権力から自由になること

・警官になった君=昔は権力を嫌がっていたけどいつしか権力を持つ側に回ってしまった人

・飛行機で飛び立つ僕=自由を手に入れようと夢見続ける人

でも解釈できるのかなと思いました。

 

「世の中の理不尽なことを見て見ぬ振りをするのが大人になる事だというのなら、僕は一生、子供のままだって構わない。」子供のときに思ったことを忘れるな、流されるな、抗え。というNeruさんからのメッセージなのかもしれませんね。

 

歌詞

仄暗い城壁で淘汰した ガス臭いこの街に生まれて

僕らまだ草原の 色も知らない

ここでずっと救いを待ってても モノポリーが上手くなるだけさ

君はそう笑っていた

 

群衆の悲鳴 響く銃声 何を命と言うんだろう

白い息混じり 君は呟いた「逃げよう」

 

あの頃の僕ら 夢を見ていたんだ

この檻の先には 温もりと愛がきっとあるんだ

閉じた窓の 向こうへ飛んでいく

夢を見るのも 何回目だったっけ

 

遥か遠い思い出の話 君が自慢気に見せてくれた

馬鹿みたいな設計図 子供の空想

そして手招く君に釣られ たった今目の前にあるのが

あの日の飛行船だ

 

遠ざかるブザー 騒ぐ警官 発砲の合図が飛ぶ

僅かな時間 朽ちた天井を 抜けた

 

あの日の僕ら 夢を語っていた

この檻の上から ゴミの様な都市を見下ろすんだ

錆びたスロットル 骨が折れるくらいに

目一杯押し込んで今 現実を突破しよう

 

警告のサイン 不明な素因 止まらぬエラーランプに

顔色変えず 高度上げて君は 笑う

 

エンジンがヒートして 機体がどうしたって

気にもしない程に トリップしてしまう大空は偉大さ

身ごとどっかに 吹き飛んでしまったって

これはこれでもう いいんだって思っている