ひなたぼっこ世にはばかる

ボカロとアニメと本の備忘録

kemuさんの『六兆年と一夜物語』を解釈してみた

こんにちは。てぃなです。

高校生のときkemuさんの曲が大好きでよく聴いていました。

先月、嵐の二宮さんがMステで『六兆年と一夜物語』を紹介してくださったと聞き、ハマっていた記憶を引っ張り出しつつ解釈しようと思い立ちました。

まずは素敵な本家様をどうぞ。

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二宮さんが紹介してくださったのはおそらく、まらしぃさんがアレンジしたピアノverです(違っていたらすみません)。そちらも本当に素敵なので、ぜひ聴いてみてください。

途中で、同じkemuさんの曲『インビジブル』が入るアレンジも粋で大好きです。

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登場人物

忌み子(=恐ろしい力を持った、災厄をもたらす子)と呼ばれ、集落の人たちから暴力を振るわれている少年。

動画のコピーに「少年は、人になりたかった」と書いてあるため、人ではない化け物、もしくは人でなしと言われ続けて育ったのだと思われます。

 

MVを見ると、男の子は普通の人間の姿をしているため、異様な姿という意味の「鬼子」ではないと思います。何らかの邪悪な恐ろしい力を持っていたか、厄日など運の悪い日に生まれてしまったことにより、周囲から忌み嫌われていた「忌み子」だったのでしょう。

 

舌のない少女。

2番サビの「もう子どもじゃない」と、2番Aメロの「君はいつしかそこに立ってた」「名前も舌もない」、2番サビの「忌み子」から察するに、経済的な理由などで親に望まれずに生まれたために身を売られ、集落にやってきた売春婦だと思われます。

望まずに生まれてきたという意味での「忌み子」。

舌を抜かれたのは、人身売買か売春の際に抵抗するのを防ぐためではないでしょうか。

 

重要表現

忌み子、鬼子、鬼

忌み子=望まずに生まれてきた子 or 何らかの災厄をもたらす子

・鬼子=親に似ていない子ども、異様な姿で生まれた子ども

・鬼=民話や郷土信仰に登場する、悪い物・恐ろしい物・強い物を象徴する存在。おぬ(隠)が転じたことばで、元々は姿の見えない、この世のものではないことを意味します。

 

鬼という概念は、日本や中国などの仏教思想に登場します。西洋思想でいう悪魔です。西洋で戦争やペスト流行により魔女狩りが行われたように、自分ではどうにもならない何らかの悪い現象を「忌み子」「鬼の子」のせいにしていたのでしょう。

 

夕焼け

日没に空が赤く見える現象。

太陽が沈むことから儚さを想起させ、また、子ども時代に遊んでいた記憶を懐かしむ郷愁の象徴としても使われます。

 

「夕焼け小焼け」は、「大判小判」のような言葉の語呂です。「名も無い時代」という歌詞から考えると、大正時代につくられた童話(夕やけこやけで 日が暮れて~♪)ではないと思います。

 

知らない声、耳鳴り

この曲単体で解釈するならば、少年が忌み子とされていた原因である”恐ろしい力”が発動したと考えられます。kemuさんの曲全体で見るならば、別曲『カミサマネジマキ』で発明されたすべての願いを叶える装置の力です。

 

六兆年

地球の誕生は46億年前なので、六兆年前に人間が存在しているはずがありません。似た数字で6億年前だと、地球は先カンブリア時代から古生代に突入し、生物が爆発的な多様化を始めたときです。

この生物誕生爆発と全人類消失を対比させ、さらに「名も無い時代」を強調するために、あえて地球さえ存在しない「六兆年」をタイトルに採用したのかな…と解釈しています。

 

また、6という数字には様々な意味があります

西洋思想では「誕生」。神がこの世を6日間で創造したという神話からきています。ただし、6を3つ並べると「悪魔」の意味になります。

中国では縁起の良い数字です。「流」と発音が似ており、障害がなく流れるように成功することを想起させるからです。

一兆はゼロが12個並ぶので、ちょうど6の倍数ですね!

 

こじつけ解釈しかできなくてすみません。ただ、色々な意味を込めた「六兆年」なのかなと思っていただければ幸いです。

 

ストーリー考察

僕は何も知らなかった

これは、誰も知らないおとぎばなし。

 

むかしむかし、ある日本の集落に、名も無い少年がいたそうな。

少年は、産まれついたときから「忌み子」ーー恐ろしい力を持った、災厄をもたらす子ーーと忌み嫌われ、その身に有り余るほどの暴力を受けていた。

 

「悲しいことなんて、何もない」

産まれたときから暴力を受け続けた少年は、悲しいという感情を知らない。

そのはずなのに、引っかかりを覚えるのはなぜだろう。

 

今日もまた少年は母親に手を引かれ、どこかへ連れて行かれた。

 

僕は何も知らない。

叱られたあとの、お母さんのやさしさも。

雨上がりに握った、手の温もりも。

感情がないなんて嘘だ。

本当は、心が寒いんだ。

 

僕はなんで死なないんだろう?

「生きたい」って夢のひとつも見れないくせに。

こんな僕のことは誰も知らないまま、今日も一日が終わる。

 

ある日、君がやってきた

吐き出すように怖い暴力と、蔑んだ目を向けられる日々。

そんな中、君はいつしかそこに立っていた。

 

僕と話したら、君も暴力を受けるかもしれない。だからダメだ。

「君の名前が知りたいな」

それでも抗えず話しかけてしまった僕に、

「ごめんね。名前も舌もないんだ」

君はそう答えた。

 

もしかして、君も忌み子なの?

僕と同じように暴力を振るわれているの?

 

「一緒に帰ろう」

僕の居場所なんか何処にも無いはずなのに、君は僕の手を引いた。

 

僕は何も知らない。

君は親に捨てられた売春婦で、もう純粋無垢な子どもではないことも。

でも、今感じている手の温もりだけは、本当なんだって分かるよ。

 

なぜ君は、僕の手を取ることを止めないんだろう。

忌み子である僕と一緒にいるところなんか見られたら、殺されちゃうのに。

 

いつの間にか雨が上がって、綺麗な夕焼け空が広がる。

僕は考えるのを止めて、二人で空に向かって駆け出した。

 

みんな いなくなればいいのに

僕たちは今までを取り戻すように遊び回った。

やがて日が暮れて、そして夜が明けたとき、

大人たちに捕まった。

 

また暴力を振るわれるのは嫌だ。

でも、僕のせいで君が責められるのは、もっと嫌だ。

 

こんな嫌な世界、僕と君以外、みんないなくなればいいのに。

 

「その願い、私が叶えてあげる」

知らない声が聞こえたその瞬間、

僕と君以外の全人類が、消えた。

 

僕は何も知らない。

これからのことも。君の名前も。

でも、今はこれでいいんだって、思うんだよね。

 

あのとき聞こえた知らない声は、今はもう聞こえない。

 

まとめ

ざっくり言えば、周囲から嫌われていた二人が駆け落ちするお話です。

全人類を消すという暴挙に出たところに、私はボーカロイド曲らしさを感じます。ふつうはロミオとジュリエットみたいに二人で遠くに逃避しますから。

 

さて、駆け落ちした二人はどうなったのでしょうか?

気になる方は、kemuさんの次回作『地球最後の告白を』を聴いてみてください。

 

ちなみに、次回作では歌詞に「メトロポリス」が出てきます。

あれえ…都市じゃなくて集落じゃなかったっけ…西洋じゃなく東洋の世界観じゃなかったっけ…みたいな苦悩があるので解釈書くかどうかは未定です。